ヘルニア2月

椎間板ヘルニアの経過

3日前に信濃町にある某大学病院でMRIを撮ってきました。
嬉しい事に、11月に撮ったときよりも、椎間板ヘルニアは小さくなっていました。症状は、疲労が蓄積すると左脚の脛に軽い違和感が出る程度です。

ヘルニア11月
11月に撮影したときの画像

ヘルニア2月

2月22日の画像 ヘルニアが狭小化して、脊髄への圧が軽減されたように見える

 担当医師は、同大学病院の准教授ですが「なんでヘルニアが小さくなったのか分かりませんが、まあ、良い方向に向かっているということで安心しました。重たい物を持ったりしないで、現状の生活を維持する感じで過ごしてください」というコメント?意見?でした。

 「あのさ、偶然に小さくなったんじゃなくて、アタマ使ってヘルニアが改善するように努力してるんだよ」と言いたい。
  トータルで2時間かかって、診察時間は3分間。指一本カラダに触れることなく、何に気をつけているのか、どんな暮らし方に変えたのか、そんな事すら質問しない。

 病院の診察に対する思いは、新書「腰痛はアタマで治す」に書いたので、今更あれこれ言うつもりはありませんが、あれで診察したことになるんだから。。。敵いません。

 最近、テレビや雑誌で盛んに「85%の腰痛は原因がわからない」と言っているようですが、原因が分からない理由は、シンプルだと私は考えています。

 85%の腰痛症は、画像検査の結果には描出されない軟部組織の機能的な問題に原因があるからです。
 これらの問題は、実際に触診したり抵抗を加えたり、自動・他動で動かさないと原因が特定しにくいのです。
 少なとも、座る姿勢や歩行、下肢の機能、かがみ方や持ち上げ方などのフォームをチェックしなければ、本質的な原因はみえてきません。

「痛みがある場所に原因はない」
リハビリの父であるヤンダ博士の言葉に誠がある。

 腰痛症に限ったことではありませんが、運動器の問題に対して機能と構造の両方から切っていかなければ、100年経っても状況は改善しないでしょう。
 椅子に腰掛けたまま診断するってことは、車のボンネットを開けずにエンジンが故障している場所を言い当てるようなものです。

 機能面から問題を切れば、パンドラの箱を開けることになります。刻々と変化する動きを3次元で分析して解析する必要があるわけですから、静止した写真と睨めっこするのとはワケが違う。

 面倒でも困難でも、一生をかけてそこを追及することが、「専門家」と呼ばれる人たちの使命であり、人から尊敬される職業なのだと思います。 

 先進国のなかで日本の医療レベルは、制度的な問題や既得権者たちの利権を守るために歪められ、大幅に遅れているところが多々あります。
 保険制度に革命でも起こらない限り、腰痛症に対する療法は、これからも進歩しないのかも知れません。

 立場が異なると景色も事情も変わるので、医師にしか分からない事や悩みも沢山あると思います。

 けれども、ベルトコンベアー式の診察という悪しき慣習から抜け出せないままだとしたら、医師としての信頼感と説得力を十分に活かしきれず、とても勿体ないことだと思います。

例えば、下記のテストを実施した場合の所要時間は4〜5分ですが、これだけでも腰痛症の原因を特定するのに、重要な情報が得られます。

1.姿勢検査 2分 (前額面と矢状面で、それぞれ4パターンに振り分ける)
2.座り姿勢のチェック 30秒
3.下肢の可動性チェック 30秒
4.しゃがみ方、屈み方のチェック 30秒
5.荷重バランス5秒 (2つの体重計で計測)

 医師が行わなくても、PTが隣で計測すれば診察時間は延びないはず。

 患者の中には「医者に行っても治してくれない」と勘違いしている方もいますが、医者は診る事が第一の仕事であって、治すのは自分自身です。

 医師には、「結果」ではなく「原因」を丁寧に説明し、何に気を付けていれば予後の悪化を防げるのかを、アドバイスする責務があると思います。

  兎にも角にも、数分の診察時間であっても、双方にとって有意義な時間になるように、もうちょっと工夫して頂きたいと強く願います。

解剖実習で学んだこと

 帰国してからバタバタしていて、解剖実習の体験を整理をする時間が捻出できずにいますが、
既に日々の治療に大変役立っています。

 ー1°で保存されている御検体は、死後硬直しておらず、生体と同じく関節や脊柱に可動制限があります。
皮膚と脂肪組織を取り除き、全身の筋肉が見える状態にしてから、上肢と下肢を多角的に動かしてみて、肩甲帯と骨盤帯に付着している筋膜の連動性や癒着を
視診と触診で確認することができました。
 
 ホルマリンでフィックスしていないからこそ試せることであり、これだけでも多くの気づきや確認できる事があるのですが、さらに関節の可動制限に
なっていると思われる癒着した筋や腱、靭帯をメスで切除して、どの組織が制限因子になっているのかなど、様々なことが確認出来ました。

 例えば、股関節の外旋に制限がある場合、大臀筋と外側広筋が連結する部位と腸脛靭帯と外側広筋の癒着に対して、徒手療法で可動域を改善するわけですが、
その部分をメスで剥離すると、徒手療法と同様の結果が得られることがわかります。
 つまり、施術によって得られる効果を、解剖しながら確認し実証することができるわけです。
このことは、やってきたことの意味を確信することに繋がりますし、徒手でアプローチできる範囲の再確認にもなります。

 実際に、椎間板の断面を触ってみたり、小指ほどある坐骨神経を引っ張りあげてみたり、横隔膜の張りに触れたりすると、画像や動画だけでは知ることが
出来なかった情報が得られました。(まさか、頭皮や顔の皮膚を私が剥離することになるとは予想していませんでしたが)

 実習に参加する前と後では、人体への理解と死生観が大きく変わりました。
ドナーに対する感謝の気持ちを忘れず、この経験を多くの患者さんに活かしていきたいと思います。

伊藤和磨

20170119-Jornal Nikkey Shimbun p6 Samurai 17

サムライの姿勢17話 腰痛持ちの賢い生き方 その3

【20年止まったままの腰痛診療】

 エジプトに滞在しているはずだった9日間が、病院巡りとなったわけですが、幸いにも知人による助けで、3名の著名な脊椎外科医の診察を受けることができました。

3名ともMRIの画像所見を見て、「間違いなく、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛」という診断でしたが、一人も手術を勧めてきませんでした。 

 一般的な外科医だったら手術を勧めてもおかしくない状態なのに、あえて保存療法を推奨してきたことに感心しました。
  一方、診察室で行われた検査は、神経学検査、筋力検査、反射検査の3種類のみで、所要時間はたったの2分間でした。

腰痛の本質的な原因を探るためには、既往歴、職業、スポーツ歴、ライフスタイルの問診から始まり、姿勢検査、歩行分析、呼吸パターンの他に、屈み方、しゃがみ方、ねじり方といった機能的な検査も実施する必要があります。

 しかしながら、患者の体に指一本触れることなく、パソコンに向かって患者のデータを入力しながら、診断をしてしまう医師が山ほどいるのが現実です。

【腰を診て人を診ず】

 日本の医療は、健康保険がベースとなっているため、一人当たりの診察時間に数分しか割けないのは仕方がない面もありますが、数分間であっても、もっと必要な情報を沢山得る方法はあるはずです。

 「腰を診て人を診ず」。既存の悪しき診療形式が変わらない限り、今後も医療機関では「腰痛は原因がわかりにくい症状」であり続け、「不要な手術」を受ける患者と、治るはずの腰痛を慢性化させてしまう人の数は減らないことでしょう。

【ヘルニアがあっても痛くないのは、なぜ?】

 脊椎外科の診察を受けて、新しい発見も幾つかありました。なかでも「椎間板ヘルニアがあっても、痛い人と痛くない人がいる」また、「なぜヘルニアが神経を圧迫しているのに、1カ月位経つと症状が緩和するのか」という疑問に対する答えです。

 その内容とは、「飛び出した椎間板や変形した骨が、脊髄や神経を落ち潰していたら、痛みや痺れが発症しないケースはほとんどない。

無自覚だとすれば、それは神経の病変。写真には神経が圧迫され、映っていても、まだ神経が逃るスペースがある場合は、症状が軽度で済むこともある」

 また、椎間板ヘルによって眠れないほどの痛みや、数十メートの歩行が困難になっても、暫くすると症状が治まって歩けるようになるのは、「神経の炎症が治まると、神経の腫れがひいて圧迫されなくなる。患部周辺に分泌された炎症物質が吸収されて痛みが改善する」。

【学んだ事】

 今回の事を経験して身をもって知らされた事は、神経に炎症が起きてしまったら「時間薬」による効能を辛抱強く待つことです。
弾薬庫に引火したら、火薬が無くなるまで爆発・炎上し続けるように、脊髄、神経根が炎症(引火)を起こしたら(真性の神経症状)、それが治るまでは、いかなる治療も効果が持続し難いということです。

ただし、こういう重篤なケースは腰痛を訴える患者さんの15%程度で、それ以外は筋筋膜性の腰痛の可能性が高いう事です。(多くの腰痛症の病巣が、画像検査に描写されないワケがここにある)
つまり、専門家によるマッサージや鍼治療、セルフケアで症状を改善できるわけです。

椎間板ヘルニアや脊柱管・椎間関節の狭窄があったとしても幾つかの事を守っていれば、腰痛を発症させずに暮らしていけるということです。ちょっと希望がもてますよね。

つづく。

20170105-Jornal Nikkey Shimbun p6 Samurai 16

腰痛持ちの賢い暮らし方 その2

【人生で最も痛い経験】

 昨年の8月、ひどい坐骨神経痛を19年ぶりに味わいました。左側の尻とすねの外側が、なにをしていても激しく痛み、夜も眠れないほどでした。ずっと犬に噛まれているような強烈な痛みです。

 若い頃から腰痛持ちで、10代のときに6回もギックリ腰を経験していますが、その頃の痛みと比較すると、今回の痛みの方が遥かに辛いものでした。

 どんな治療をしても改善しなかったのですが、1ヵ月くらいすると痛みと痺れは、徐々に消失していきました。
「もう、2度とあんな思いはしたくない」そう思っていたのに、それから1ヶ月も経たないうちに、再び悪夢が訪れたのです。

 8月の激痛よりも、さらに激しい痛みで、20メートルも歩くことができなくなりました。コンビニで支払いを済ませる間、痛みに耐えられずにしゃがんでしまうほどの痛みが、尻とすねの外側に拡がりました。

 就寝中、何度も痛みで目覚めてしまい、寝不足の日々でしたが「腰痛改善スペシャリスト」という肩書きを背負っていながら、腰痛で仕事を休むわけにもいかず、いつも通り腰痛で悩んでいる人たちの治療を継続していました。

 その月の下旬に、エジプトへ旅行に行くはずだったのですが、泣く泣く断念して、病院で20年ぶりにMRIを撮ることにしました。検査結果の画像を見たとき、これが自分の脊柱なのかと愕然としました。

 骨と関節が完全に変形し、脊髄と神経根が椎間板ヘルニアにより4カ所で圧迫されていたのです。画像から年齢を推測すると80歳くらいの状態です。

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正常な脊椎と椎間板

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椎間板の水分が抜けて黒ずみ、飛び出している私の椎間板

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同じく自分の画像。ヘルニアが脊髄を圧迫している様子がわかる。椎間板が極薄になっているため、すべり症に発展するリスクが高い。

 16年間、休まず毎日12時間患者の体を治療してきた結果、自分の体に何が起きていたのか、思い知らされた瞬間でした。そして、この先どうやって、この腰をもたせれば良いのかと考えました。(つづく)

白衣

解剖実習

 アリゾナ州フェインックスでの、5日間の解剖実習が終わりました。
衝撃的な体験の連続で、少し放心状態になっています。防腐処理していない献体だからこそ、様々なことを見て触れて確認することが出来ました。

最終日、脚が疲れてしゃがんだ時に、献体(おばーちゃん)の足の爪が目に留まりました。オレンジ色に塗られた爪をみて、「最期に塗ったのは、いつなんだろう。どんな気持ちで塗ったのかな」
そんな事が頭に浮かびました。歳をとってもお洒落を欠かさない粋な人だったのでしょう。

瞳孔が開いた目をみていると、かつては、この目でどんな景色や人々を見てきたのかと想像します。
全く違う環境で生まれ育った自分と、死後に対面して解剖されるという不思議な因縁についても、考えさせられた数日間でした。

夕焼け

大変貴重な学びの機会を与えて下さった8体のドナーに心から感謝。

マイヤー
アナトミートレインズの著者 トーマス氏と。

本

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今年最後のゲスト

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今年最後のゲスト。

年明け8日のカップ戦に出場する可能性ありとの事。子供を授かってから表情が柔和になった弟。
来年こそは、努力が報われますように。

何歳になっても身体の可能性は広がっていきます。

脳は楽しいことを好みます。
その欲求に応えれば、何歳でもネットワークは広がっていきます。

ネットワークの拡大は、若い頃に出来なかった事だって、可能にさせるのです。
反面、局所の動きにフォーカスした退屈な運動要求には反応を示しません。

彼の短期間での進歩は、筋力、柔軟性、持久力の変化よりも神経系の変化によるものです。そして、機能を向上させた最も大事な要因は、愉しんでいること。
好きなことを楽しみながら、動作全体のシステムをアップデートしていくことによって、多くの問題が解消されていきます。
生活にもリハビリにも、良質な遊びを。

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古巣

 20年ぶりに古巣ヴェルディ川崎OBたちとチャリティーマッチでプレーしましたREAD MORE