椅子に座ると腰痛になる人へ

〜椅子が怖い〜 「椅子に座ると腰が痛くなる」「座っていると尻から太ももの辺りが痺れてくる」「立ち仕事に転職しなければいけない」 「腰が痛くならない椅子を見つけたい」 椅子に座ることが苦痛でも、椅子に座らずに生活をすることはできません。だから、椅子と腰痛で悩んでいる人が後を絶たないのです。これは日本だけの問題ではなく、世界共通の問題です。   「椅子が怖い 腰痛放浪記」  夏樹静子著(新潮文庫)には、著者の経験を通して座ることへの不安と苦痛がリアルに描かれています。 https://www.amazon.co.jp/腰痛放浪記-椅子がこわい-新潮文庫-夏樹-静子/dp/4101443106   椅子と上手に付き合っていく為には、最適な椅子と机の選び方、効率的な座り方を身につけることが大変重要です。   〜腰痛のメカニズムと〜 腰痛症には、代表的なパターンがあります。 ①立っているとき ②座っているとき ③歩いているとき ④仰向けに寝ているとき ⑤屈んでいるとき ⑥起床直後 ⑦運動後 ⑧物を持ち上げた後 ⑨心配事が重なったとき 現代人は長時間座っている人が多いため、座っているときや立ち上がった後に腰の痛みを訴える人が大勢います。 そもそも骨盤の形状は座ることに向いていません。その上、座っているときは上半身の重さ(体重の約60%)が腰部に集中するので、着座姿勢が悪いと腰痛になりやすのです。 骨盤が後傾して猫背になると腰部の筋・筋膜、靭帯、椎間板へのストレスが著しく増加します。不良な姿勢が常態化すると、これらの組織に微細なダメージが蓄積して変性や変形が起きます。また、筋組織に疲労が蓄積して繊維が硬化すると筋肉の内圧が高まり、血管や神経が圧迫されて虚血性の痛みが起きやすくなります。運動器の痛みや痺れの多くは、パンパンに張って硬くなった筋肉が原因と言っても過言ではありません。 長い間、放置しておくと閾値レベル(痛みの感度)とストレス耐性が低下していきます。その結果、昔はなんともなかった動作でも、痛みや違和感を感じるようになるのです。強い痛みを経験すると、脳が過度な防衛反応を起こし、患部周辺を硬直させて動かないようにします。痛みを抱えていると、ロボットみたいな動きになってしまうのは、こうした理由からです。 痛みを避ける代償的な姿勢や動作パターンが一過性であれば問題ないのですが、定着すると元の状態に戻れなくなってしまいます。ですから、痛みをコントロールできる範囲内で、正しい姿勢や動作パターンを再学習することが重要なのです。   ~座るから腰痛になる〜 椅子に座らざるを得ない人はどうすれば良いのか。 結論から言うと、座らずに腰掛けて暮らすようにすれば良いのです。座るから腰痛になるが、腰掛ければ腰痛にならない。これは普遍的な事実です。座面が低い椅子に座るから骨盤が後傾して、猫背になるのです。習慣的な猫背は万病の元。 一方、膝よりも股関節の位置が高くなる椅子に腰掛ければ、自ずと骨盤が立って腰椎に自然なアーチが生まれます。さらに、座面の先端に腰掛ければ(端座)踵で地面を捉えることができ、足裏で全身を支えられるようになります。それから足を前後に開くか左右に開脚すれば、骨盤が立って理想的な着座姿勢にセットアップされるのです。 座り方のフォーム(型)については別の機会にご紹介しますが、とにかく腰掛けて開脚すれば腰痛になるリスクは極めて小さくなります。 机に関して言えば、昇降式の机を選ぶのがベストです。  立って作業→腰掛けて作業→立って作業→腰掛けて作業。こういうルーティンを守っていれば、長時間のデスクワークでも心身への負担を大幅に減らすことができるのです。   〜本気で椅子を探す人に薦めたい〜 先日、多種多様な椅子を販売している「ワーカーホリック」でセミナーを開催してきました。 対象者は、ワーカホリックのチェア・コンシェルジュたちです。 https://www.iamworkaholic.jp   ここまで椅子と真剣に向き合っている人たちも珍しいと思います。椅子道場と呼ぶのが相応しいかも知れません。チェアコンシェルジュたちが切磋琢磨し、レベルアップを図っている姿に関心しました。 デスクワーカーの身体的な負担を軽減し、仕事に没頭できる環境(特に椅子)を勧めることが彼らの役割。多くの参加者が着座姿勢に関する疑問を次々と投げかけてきました。 基本的に私は、座面の先端に座ることを勧めているのですが、彼らは座面の奥に座って背もたれに寄りかかった状態で仕事をすることをお客様に推奨していました。 「どちらか一方に偏ることなく、意識的に座る位置を変えることが望ましい」と伝えました。頭でっかちにならないように、皆さんには色々な座り方を実践してもらいました。 最も時間をかけたのは、「骨盤を立てて骨で座ること」です。 始めは堅かった部屋の空気も、次第に和らいでいきました。レクが終わった後、コンシェルジュのリーダーが皆を集めて「自分たちの考えとお客様に勧めてきた事は間違っていなかった。今日はその事がはっきりして良かった」と、熱く語る姿が印象的でした。 真剣に自分に合う椅子を求めている方は、ぜひワーカーホリックにお問合せください。 チェア・コンシェルジュたちは、腰痛症や椅子に対する私の考え方も理解してくれています。昔からお店や商品の宣伝はしてきませんでしたが、彼らの熱意と知識は、椅子選びで悩んでいる人たちの助けになるはずです。

腰痛改善の鍵を握る動作フォーム

〜腰痛改善の鍵を握る動作フォーム〜 どのような部位の症状であろうとも、疼痛や機能障害を引き起こす原因は、毎日繰り返し行なっている動作フォームのエラーにあります。ですから、姿勢改善だけでなく動作フォームを修正しない限り、再発のリスクはいつまでもなくなりません。フォームを修正するには、身体の使い方への理解、姿勢(アライメント)、動かす順番(タイミング)、支点の明確化など、様々な要因を正していく必要があります。どれか一つでも欠けると、一部の組織に負担が集中することになるからです。 動作修正はディテールに拘ることが非常に大切であり、なんとなくできているくらいでは十分な安全性と安定性を獲得するはことできません。そのため、Maro'sでは初診のときに立位の姿勢と着座姿勢、呼吸、歩行などをチェックした後、しゃがむ動作と屈む動作のチェックを入念に行なっています。この2つの動作をまともに出来ている方は、ほぼいません。だからこそ、腰や膝を壊す人が後を絶たないのです。 〜たった10分でも見違えるほど変わる〜 短期間で動作フォームを修正させるには、指導者の経験と勘、センスが不可欠。問題点を見つけ出して的確にアドバスをしていけば、10分ほどで危険なフォームからほぼ安全なフォームへとレベルアップさせることができます。このパートは私が最も得意とするところであり、フォームの修正だけでなく不良姿勢と疼痛が同時に改善させるケースが多々あります。 今回掲載する動画は、初診で2つの動作フォームに介入する前と後のものです。所要時間は10分。このクライアントさんは、現在もレベルアップし続けており、当初の問題はほぼ解決されています。年末に上達した様子をアップしたいと思います。 修正前のかがみ動作 修正後のかがみ動作 修正前のしゃがみ動作 修正後のしゃがみ動作

高齢者の肉体改造

施術後の脚と施術前の脚の比較動画〜なんでも加齢のせいにしてはいけない〜 誰しも歳をとると猫背になって運動機能が低下し、膝痛や腰痛といったトラブルを抱えるようになります。身体の節々が強張ったり痛んだりすると、出かけるのが億劫になって家に篭るようになります。 関節を動かさないでいると、関節の運動を滑らかにする潤滑液が分泌されなくなり、より一層動かしにくくなってしまいます。こういう状態だと動き出す瞬間に、関節に強い痛みが生じやすくなります。 一度強い痛みがインプットされる(経験)と、脳は同じことになるのを極端に恐れ、患部周辺の筋肉を戦略的に固めて動かないようにしてしまいます。このような防衛反応は不随意に起きるため、脳が「もう大丈夫だ」と安心できる根拠を与えない限り、いつまでも患部の強張りと循環不全が残ってしまうのです。 患部の問題は改善されているのに、怖がりで脳による過剰な防衛反応のせいで、いつまで経っても慢性疼痛や機能障害が治らないケースが沢山あります。そういう患者さんに対しては、痛みの仕組みや患部を痛めてしまった経緯について説明し、徒手療法で心地良い刺激を入れてあげることが大切です。防衛状態が解除した後、最適な身体の使い型を身につけてもらえば、元の状態に戻ることができるのです。 お年寄りが病院に行くと「年だから仕方がないですよ。みんなそんなもんですから」なんて片付けられてしまう事が多いようですが、そういうやる気のない医師の話に耳を傾ける必要はありません。年のせいにして諦めてしまうのは、本当に勿体ないことです。老い方の個人差は大きく、きちんと身体のケアをしている人は80歳を越えてもピンピンしています。   〜やるべきことをやれば結果=違いは出せる〜 加齢による身体的な変化は様々ですが、私が最も気にしていることは肘と膝が曲がることです。肘と膝が曲がると自動的に背骨が丸まってシニア特有の円背になります。円背は運動効率を著しく低下させるだけでなく、呼吸循環器、消化器などの働きにも悪影響を及ぼします。 お年寄りの肘と膝が曲がっているのに対して、子供や青年は膝と肘が伸びています。肘と膝を伸ばして立ち歩くようにするだけで、想像以上に姿勢が良くなって外見が若返ります。筋トレで筋力強化しただけでは姿勢は良くなりません。しつこいようですが、健康で若々しくいるためには、手足をしっかりと伸ばして立ち歩く習慣を身につけることが不可欠です。 痛みや疲労など、不快な感覚は身体の背面に感じるものです。実際、首の痛み、肩こり、背中の痛み、腰痛、ふくらはぎの痛みや痙攣を訴える人は大勢いますが、スネ、太ももの前、腹部、胸部の痛みを訴える人は稀です。 身体の前面に配置されている筋群は、加齢と共に縮まっていきます。その結果、スルメイカのように身体を丸めさせます。この力に抗おうとして、身体の背面に配置されている筋群は常に頑張っています。身体の前面と背面では、どちらの方が痛みや痺れといった問題を感じやすいかと言えば、間違いなく背面です。そして、マッサージをされて気持ち良いのも背面です。 うつ伏せの状態で治療家が多いのは、こういった理由からです。身体の前面は押されるとヒイヒイいってしまう箇所が幾つもあるため、治療を受けてもそれほど快適とは言えません。 背面の方が満足度が高いことを知りながらも、あえて私は前面のオーバーホールに時間をかけています。シニアのケアに関しても同じです。脛、大腿部の深部にある塊やトリガーポイントを(特に内転筋群)徹底的に散らすと、真っ直ぐに伸びなくなっていた肘と膝が伸びるようになるのです。仰向けに寝ると膝の裏と腰が床から浮いて、腰が辛くて眠れなかった人でも、ぐっすりと眠れるようになります。 もちろん、姿勢や歩き方、しゃがむ動作も一変します。何事もそうですが、身体の治療においても特別大それた事をやるよりも、凡事に徹する方が良い結果が表れると私は考えています。組織の状態が変化するまでやり続ければ、想像以上の結果が得られるものです。   【下の動画は、大腿部のケアを念入りに行なった前と後の状態を比較した動画です】 施術後の脚と施術前の脚の比較動画 大腿部の筋を深部から緩めた後、足をもって揺らすと足部からそけい部まで振動が均一に広がっていきます。固まった状態で揺らすと、同じように揺らぐことはありません。揺らがない部位の筋膜が癒着しているか、拘縮しているためです。転倒したり大きな負荷がかかったりしたときに、その部位の組織が壊れて怪我するリスクが高くなります。 施術前後の脚の動きの比較動画 下肢の強張りが改善すると膝関節と股関節の連動性が良くなり、脚を動かしたときに感じる重さが大幅に変化します。 両脚施術後の動きの比較動画 1時間あれば80歳でも本来の動きに戻すことができます。継続すればさらに動きが改善されていきます。

首肩凝り・眼精疲労を軽減する眼球運動

〜心身の不調を改善する眼球運動〜 10月6日六本木ミッドタウンにあるシスコシステムズで、11ヶ月ぶりの対面式セミナーの講師を務めてきました。 テーマは頭痛、目の奥の痛み、頚肩部の凝り、頚性うつの予防と改善に役立つ眼球運動。 スマホやPCのモニターを注視しているときに、眼球が下に固定された状態(下転て呼ぶ)になっている人が非常に多いと言えます。姿勢を整えるためにはアゴを引くことが重要なのですが、眼球が下転した状態だと視点を正面に固定することが難しくなります。その結果、アゴが上がった状態で作業をすることになり、それがストレートネックを引き起こすことになります。   ストレートネックは、慢性的な頭痛や肩凝りの原因になるので、できるだけアゴを引いている時間を増やすことが肝要です。生活の中にちょこっと眼球運動を取り入れることによって、頭蓋と眼球の動きを分離できるようになります。それが叶えば、凝りだけでなくメンタル的な不調も予防・改善することができるのです。 〜続けていると気持ち良くなる〜 セミナーで眼球運動を紹介すると、「うわ、目が疲れる」「ちょっと気持ち悪くなった」と言う人が数人でます。こうした反応は、日頃からほとんど眼球を動かしていないことを示しています。当然、使わない神経回路や筋肉は衰えて機能低下していきます。どの部位でもあっても使わない過ぎは、使い過ぎよりも悪い結果をもたらします。 不慣れな眼球運動によって気持ち悪くなった人も、数分続けていると徐々に筋肉の緊張がほぐれてきて、最後には心地良くなっていきます。習慣化すれば、確実にコンディションは向上していきます。 後日Youtubeにオーソドックスな眼球運動を幾つかアップする予定です。場所を問わず問わずどこでも簡単にできるので是非ともお試し頂ければと思います。 〜子供に増加する斜視〜 近年、タブレットを何時間も観ている子供が増えているようですが、見るときの体勢に気をつけないと斜視になってしまうリスクが高まります。スマホやタブレットをみるときは、必ず立てた状態にしてアイテムの背後が見えるようにしておくことが重要です。こうするだけで斜視の予防になるからです。 絶対に避けていただきたいのは、スマホやタブレットを机に置いてモニターを長時間見続けること。もう一つは、必ずアゴを引いてから下を向くことです。アゴを引かずに下を向くと、頭部の重さと頚椎の関節を支えいている靭帯が弛緩して、頚部の負担が著しく高まるからです。 ちょっとした合間に眼球運動を行い、スマホやPCのモニターを見るときはアゴを引くように心掛けていただきたいと思います。