椎間板ヘルニアだっとしても

【ステレオタイプの診察】

 

 6年ほど前に椎間板ヘルニアを悪化させて、5分間立っていることもできなくなりました。
足の痛みと痺れで100m以上歩くことができず、少し歩いてはガードレールに腰掛けて休憩していました。
  「腰痛を改善させることを生業としている者が、なんて情けないことだ」と自己嫌悪に陥っていました。治療を受けた後は少しだけ楽になるのですが、またすぐに立っていられなくなります。
 どうにも困り果ていたとき、ある方の紹介で都内のK大学病院・整形外科の教授を紹介していただきました。
 コネがなければお目にかかることができない著名なドクターなので、なにか真新しい事を学ぶことができればと、胸が高鳴りました。
  ドクターはMRIの画像を見るなり、「これはひどいね。骨と椎間板の壊れかたが80歳みたいだ」と言いました。「よくこれで仕事できてますね。スクワットなんてもってのほかだし、ジョギングもしない方がいい」と。
 そして、米国で開発されたばかりの椎間板を再生する内服薬などを勧められました。
 姿勢や歩行の分析、動作解析など、機能面の問題を詳しくチェックしてもらえるのかと思いきや、読影の他はなにもしてもらえませんでした。
 ここぞとばかりに沢山質問したのですが、「とにかく腰部に負担をかけないように暮らすことが大切」という、当たり前の答えしか返ってきません。
 期待値が高かっただけに、ステレオタイプの診察にがっかりしたことを覚えています。

健全な脊椎と椎間板

私の脊椎と椎間板の画像。(6年前)現在はさらに状態が悪化しているはず

​【画像所見を真に受けすぎない】

 診察のとき、レントゲンやMRIの写真を見せられてショックを受けたり、自信を失ったりする人が大勢います。
 変形した椎間板や関節の画像をみせられて、「これが原因です」と言われたら誰だってゲンナリするでしょう。こりゃ痛くて当然だと。
 けれども、明らかに器質構造的な問題が認められているのに、痛みや機能障害が一切でない人もいます。
 一方、画像所見では問題がないのに、強い痛みや痺れによって日常生活に支障が出る人もいるのです。
 つまり、画像の所見だけでは本質的な原因はわからないということです。残念なのは、医師と患者の双方が写真に写し出さているものが、主訴の原因だと思い込んでしまうことです。
  実際、画像の所見と責任病巣が完全に重なるケースは稀です。あくまでも個人的な意見ですが、画像所見を間に受け過ぎないことが大事だと私は考えています。

  【6年後のいま】

 あれから6年経過しました。試行錯誤を重ねて腰痛と上手に付き合っていくコツを掴んだ気がしています。
 週に4日7Km走り、つまらないと文句を垂れながらウェイトトレーニングに励んでいます。
 慶應のドクターから言われたもってのほかな運動も再開しています。当時の自分では、絶対にできなかったであろう種目も淡々とこなせています。
 あの時に言われた通り、腰に負担をかけない安全な暮らしをしていたら、今頃どうなっていたのでしょう。

 腰部に負荷がかかる種目も問題なく
 退屈な筋トレもベースアップに役立つ
  完全に腰痛がなくなったかと言えば、そうではありません。今も疲れが溜まると左臀部から足先にかけて、違和感が生じることがあります。
 しかしながら、どこをどのようにケアすれば改善できるのか、今はもう分かっています。だから、少々の違和感があっても焦らなくなりました。
  私と似たような症状を抱えている人は、全国に山ほどいるはず。
 そういう方のために、自力で腰痛をマネジメントする方法を、これから少しずつご紹介していきます。

  最後に】

 画像検査の写真を見せられ、腰椎滑り症、分離症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などと診断されて気持ちが折れてしまった方へ。

ヘルニアで神経根が圧迫されている(6年前)

椎間板が押し出されている様子(6年前)

 写真を見れば分かると思いますが、私の脊椎や関節、椎間板は醜いほどボロボロです。だからと言って、ずっと痛みや痺れが続くわけではない。
最長でも3ヶ月あれば症状は軽減していきます。
 理にかなったことをコツコツ続けていれば、身体は必ず再生します。
 医師から言われたネガティブな話は聞き流して、ディテールに拘りながら着実に腰痛を改善させていきましょう。