MARO'S
坐骨神経痛 慢性腰痛 椎間板ヘルニア 股関節の痛み・変形性股関節症など

~ほんとうの腰痛は歩けない~

腰痛を拗らせてしまうと腰部の痛みはほとんどなくなり、脚が痛くて(痺れて)立っていることも歩くこともできなくなります。腰が痛いんだよと言っていられるうちは、そこまで悪化していないと言ってもよいでしょう。

私自身も、20歳までにギックリ腰を6回経験し、慢性的な腰痛を患ってはいましたが、立っていられない、歩けないほどの腰痛は42歳になるまで未経験でした。ですから、スタジオの玄関から這って中に入ってきたり、誰かに付き添われて車椅子で来たりする患者さんの姿を見るたびに、「そこまで痛むものかな?」と思っていました。

けれども実際に、椎間板ヘルニアのせいでひどい坐骨神経痛を経験した後は、考え方が一変しました。「ほんとうの腰痛は腰が痛むのではなく、歩けなくなる」この事を身をもって痛感させられたのでした。ふくらはぎに広がる強烈な痛みで1分間立っていることもできず、横断歩道を走って渡ることもできません。痛む脚をベッドにのせて患者さんに施術する毎日でした。

治療を受けた後は楽になったように感じるものの、立ち上がると直ぐにふくらはぎが強烈に痛み、床にへたり込むことに。持続的な痛みは有害なノイズであり、放置しておくと、脳内で痛みを増幅させたり、痛みを創造させたりするネットワークが強化されます。

そうなると一 日中痛みのことを考えるようになり、知識と経験が豊富な専門家たちでさえ、頭が混乱して何が起きているのか冷静に判断できなくなってしまうこともあります。色々と試してみたのですが、私の場合は回復するまでに半年以上かかりました。

2度とあの経験をしたくはありませんが、立っていられない腰痛を経験したお陰で、どれほど重い患者さんが来ても、真正面から受け止められるようになりました。精神的にどのような状態に陥りやすいのかも、理解を深めるキッカケになりました。

  ~ポイントは施術する体勢~

症状が重い腰痛患者さんを施術する場合、どのようなポジションをとるかが重要になります。神経症状が出ているレベルの人は、うつ伏せや仰向けになっていられないからです。多くの場合、同じ体勢でいられるのは横向きです。Maro’sには、特殊な形状をしたアメリカ製のボディクッションがあるので、その上に横向きで寝てもらえば1時間以上でも問題ありません。

横向きで仙骨周辺や大転子周辺、鼠径部の強張りやトリガーポイントをリリースすると、仰向けでいられるようになります。そのポジションで下腹部や鼠径部、下肢にアプローチすると、ようやくうつ伏せになれます。最後に、うつ伏せでしか触れることのできない部位にアドレスして仕上げます。

  ~狙いは組織の状態を変化させること~

徒手療法の良いところは、術者と受け手の間で状態の変化を共有できること。施術し始めは、病巣に触れただけで太ももや踵に痺れや痛みが出現していた人でも、数分間続けていると「緊張が抜けてきたのがわかります」「もう痛くなくなった。不思議ですね」といった感想を言います。

求めているのは、一過性の「反応」や「反射」ではなく、状態を安定的に「変化」させることです。患部にアドレスする時間を増やすほど、状態の変化も大きくなるのですが、やり過ぎれば炎症が強まって「反動」が生じることになります。

患者さんと身体の反応を目と指で確かめながら、ギリギリのところまで攻めますが、その場で完全に治そうとする気持ちを抑えることも大事。このさじ加減は、たくさんの失敗を経験しないと分からないことだと思います。

  ~痛みが消えても治ったわけではない~

脚を引きずって来られた患者さんや立てなかった方が、帰るときには立てるようになったり歩けるようになったりすることは、驚くことではなく頻繁にあることです。

期待以上の結果がでたとき、患者さんやご家族が感激している姿は見ていて嬉しいものですが、大事なのは次に会ったときに、どんなコンディションになっているかです。その人の姿勢習慣や身体の使い型のミスやエラーを修正してあげなければ、再発のリスクを0にすることはできません。

ですから、いくら痛みがなくなってご本人が治ったと言っても、患部に負担をかけない身体の使い方を身につけてくれるまでは、安心することも満足することもできないのです。

  〜この先に目指すこと〜

幸いにも、22年間かけて積み重ねてきた経験とスキルのうえに、この頃では閃きが加味されるようになりました。患者さんのキャラクターも含めて、なにをどのようにすれば90分間で違いを出せるのか、正解を導き出す確率が上がっています。

この先目指しているのは、もっと余分な力を抜くこと。ストイックに身を削るのは大得意でも、脱力することが苦手。フワフワと漂う感じでいられたら、もっと閃きが湧いてくるんだろうと期待しています。これからも、手術を控えている人や術後に再発して困っている人たちをサポートし、その人たちが諦めていた仕事や趣味を再開してもらえるように精進していきます。