第1回 なぜ坐骨神経痛になるのか

坐骨神経痛は読んで字の如く、坐骨周辺から太ももの裏側を伝わって、ふくらはぎや踵まで痛みや痺れが拡がる症状です。椅子に座って20〜30分くらい経つと、坐骨から臀部にかけて痛み痺れが発生して、座っていられなくなるケースや、臀部から踵にかけての違和感や脱力感のために、患側の脚を引きづるようにして歩くケースが主です。

私は19歳のときに仙骨部を強打して以来、右脚が仙腸関節の辺りから抜け落ちるような感覚に悩まされていました。いつもでも右臀部と太ももの裏側に張りと違和感があって、右脚の反応が遅れてしまうのです。完治するまでに2〜3年間苦しみましたが、今になってみれば、もっと早く治すことが出来たのにと悔やまれます。

一般的に坐骨神経痛は、梨状筋と呼ばれる深部の筋肉が硬化・短縮して、坐骨神経が圧迫されることで生じると言われています。実際に、梨状筋を緩めて症状が改善するケースもありますが、意外と多いのが、太ももの裏側の筋肉(ハムストリングス)が硬化・短縮し、それが神経を圧迫して発症しているケースです。このケースであれば、テニスボールで坐骨周辺にできた筋肉のコリをほぐしてやると、一気に症状が緩和されるケースが多く認められます。

 

ハムストリングスを取り除いた後の状態

しかし、腰椎の穴(椎間孔)から出てくる脊髄神経が変形した椎間板によって圧迫されたりすると臀部に痛みが出て、そこから太ももと脛の外側に痛みが出るケースがあるので、その場合は腰椎の椎間板ヘルニアを疑う必要があります。

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軸足に比べて、利脚は外側に開く傾向(股関節の外旋)があるのですが、この状態では股関節の外旋筋である梨状筋が短縮したままになっていて、坐骨神経を圧迫するリスクが高まります。故に、利脚の方が坐骨神経痛を患う確率が高いと言えます。これを改善させるストレッチは、後日ご紹介します。

太ももの外側から脛の外側にかけて放散される痛みや鈍痛は、坐骨神経痛とは異なります。これは坐骨神経とは関係なく、臀部の外側にある小殿筋 (しょうでんきん)や中殿筋(ちゅうでんきん) 、大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)に形成されたトリガーポイントや硬化による症状だからです。

下肢に拡がる痛みや痺れがある場合、脊髄や脊髄神経による症状なのか、それとも股関節周辺の筋筋膜のコリや硬化による症状であるのかを、慎重に判別することが重要です。足に痛みや痺れが拡がると訴えると、反射的に椎間板ヘルニアや坐骨神経痛だと決めつけてしまう医師もいるので注意が必要です。個人的には画像検査を受けても、症状の原因が写真に映し出されているケースは稀であるため、先ずはテニスボールやソフトボールで患部周辺を圧迫しながら、自分で病巣を探索することを勧めています。(実際に、ボールで痛みの震源地をみつける人が7割を超えている)

ただし、会陰部(股間)に違和感がある人や排泄障害がある人は、早急に専門の医療機関で診察を受けることをお勧めします。

続く。

画像はPoket antomyより転載