腰痛を引き起こす腹筋運動

その昔、サッカーの現役選手だった頃、度重なるギックリ腰と慢性腰痛で、たくさんの医者や治療家のお世話になりました。

ヴェルディには、東大の著名なDr.たちが出入りされていました。腰痛の相談をすると「腹筋が弱いから、もっと鍛えてなさい」、「腹筋と背筋のバランスが悪いからだ」と指摘されたものです。

腹筋運動なんて、一度もやったことがなさそうな腹をしている医師に言われても、内心「いやいや、そんな単純な話じゃないだろ」と思っていました。

今思えば、やはり彼らの指摘は間違っています。
腹筋運動で腹をカチカチにしても、腰痛の予防・改善にはなりません。
当時は、IAP=腹腔内圧の重要性や扱い方を理解している医者やトレーナーは、ほとんどいませんでした。
だから、闇雲に腹筋と背筋を鍛えて、自ら症状を悪化させていたのです。

アメリカ国立労働安全衛生研究所 (NIOSH)は腰椎の圧縮力限界値 を3300N = 336kgに設定しています。
この数値を超える負荷が腰椎にかかった場合、椎間板や靭帯を痛めて、腰痛を発症するリスクが高まります。
しかし、従来の腹筋運動(シットアップ)で腰部にかかる負荷は約3350N=341Kgと、限界値を超えてしまい腰痛の発症が高まります。

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アメリカの軍隊では、シットアップとクランチは腰痛の発症リスクを高めるため、トレーニングプログラムから除外されています。

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6パックを形成している腹直筋は、脇腹の腹斜筋に比べてコアの安定性や支持力の向上に関与しておらず、鍛えるメリットは見栄えが良くなることくらいです。
腰痛のリスクを高めてまで、腹直筋の筋肥大にこだわるのか、それは本人の価値観と判断によりますが、事実はそういうことです。

腰痛持ちと分かっていながら、シットアップやクランチをやらせるトレーナーがいたら、そのトレーナーは勉強不足と言われても仕方ありません。

そもそも、腹筋だけが独立して収縮することなど、現実世界では殆どありません。
足の裏が床についていない体勢で、どれだけ腹筋を鍛えても、立っているときや動作しているときに、それを活かせるか否かは、別の問題なのです。

どうしても腹筋だけを単独で鍛えたい人は、スチュワート・マックギル博士が考案した片脚の膝を曲げて、上体を繰り返し起こす、下記のエクササイズを勧めます。この方法ならば、椎間板へのストレスを最小限に抑えられます。

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片膝を曲げ、脚を伸ばしている側の腰の下に手を入れる。アゴを引いてヘソを見る意識を保ちながら、床から肩の背面が浮くところまで上体を起こす。
上体を起こすときに息を吐き、腰に敷かれている手を床に押し付けるようにする。

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フォームが保てなくなったら、しばらく休暇してから、反対も同様に行う。