解剖実習で学んだこと

 帰国してからバタバタしていて、解剖実習の体験を整理をする時間が捻出できずにいますが、
既に日々の治療に大変役立っています。

 ー1°で保存されている御検体は、死後硬直しておらず、生体と同じく関節や脊柱に可動制限があります。
皮膚と脂肪組織を取り除き、全身の筋肉が見える状態にしてから、上肢と下肢を多角的に動かしてみて、肩甲帯と骨盤帯に付着している筋膜の連動性や癒着を
視診と触診で確認することができました。
 
 ホルマリンでフィックスしていないからこそ試せることであり、これだけでも多くの気づきや確認できる事があるのですが、さらに関節の可動制限に
なっていると思われる癒着した筋や腱、靭帯をメスで切除して、どの組織が制限因子になっているのかなど、様々なことが確認出来ました。

 例えば、股関節の外旋に制限がある場合、大臀筋と外側広筋が連結する部位と腸脛靭帯と外側広筋の癒着に対して、徒手療法で可動域を改善するわけですが、
その部分をメスで剥離すると、徒手療法と同様の結果が得られることがわかります。
 つまり、施術によって得られる効果を、解剖しながら確認し実証することができるわけです。
このことは、やってきたことの意味を確信することに繋がりますし、徒手でアプローチできる範囲の再確認にもなります。

 実際に、椎間板の断面を触ってみたり、小指ほどある坐骨神経を引っ張りあげてみたり、横隔膜の張りに触れたりすると、画像や動画だけでは知ることが
出来なかった情報が得られました。(まさか、頭皮や顔の皮膚を私が剥離することになるとは予想していませんでしたが)

 実習に参加する前と後では、人体への理解と死生観が大きく変わりました。
ドナーに対する感謝の気持ちを忘れず、この経験を多くの患者さんに活かしていきたいと思います。

伊藤和磨