第2回 筋肉による痛みの震源地を探す

 筋肉の痛みは範囲が広かったり、奥深かったりするため、病巣を自力で特定することが難しい場合があります。だから、医療従事者から「どこが痛みますか?」と質問されても、場所を正確に示せる患者は少ないのです。さらに、自覚症状を上手に表現する語彙を知らないと、誤って伝わってしまうリスクもあります。

 今回は、痛みの表現語彙と病巣を自力で探索する方法についてお話します。

症状の感じ方で原因の組織が判別できる

一般的に、筋肉の蓄積疲労や硬化によって生じる痛みや痺れは、「気だるい」「うずくような」「イライラするような」「患部を叩きたくなるような」「動かしていないとしんどい」というような感覚です。また、動かしたときにのみ、症状が出現するのも特徴です。(筋肉のうっ血がひどくて、安静時でもうずく場合もある)例えば、長時間PCに向かった後などに、首や肩の筋肉が固まって思わず揉んでしまうときは、筋肉による痛みと考えてよいでしょう。

一方、変形した関節や椎間板、かたくなった筋肉などによって神経が圧迫されたり、ウィルスが神経に感染して炎症が起きた場合の痛みや痺れは、「ピリピリする」「一瞬ヒヤッとするような」「稲妻が走るような」「電気が走る」「感覚がない」「過敏になっている」というような感覚です。真性の椎間板ヘルニアによる痛みは、それこそ半端なものではありません。ちょっとした動作であっても、腰から下肢に向かって激痛が走り、脂汗がでてきます。筋肉由来の痛みでは、こういう症状は滅多にありません。

外来で症状を説明するときに、上記のような表現語彙を使えば、侵されている組織が何であるか、医師が推理して仮説を立てるのに有益な情報となるはずです。

ボールで痛みの震源地をみつける

自力で痛みの震源地を見つけるのにオススメなのは、床や座面に置いたボールの上にのって、症状が再現される部位を見つける方法です。最近、この方法はポピュラーになってきましたが、マスターすると大抵の痛みや痺れをコントロールできるようになります。患部にボールがあたっているときに、「ああ!そこそこ!」「うわー、なんだこれ!」「ここだったのかぁ」など、ため息混じりの声が漏れ出ます。はっきり言って、病みつきになります。近くに人がいると気持ち悪るがられるので注意してください。

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最強のアイテム「マッサージノブル」

10〜12秒圧迫したら、そこをストレッチするのがベストで、圧迫とストレッチの組み合わせを2〜3セット実施すると、著しく痛みが軽減されて筋肉がスムーズに伸びるようになるでしょう。的確な圧を数回加えれば右記のように感覚が変化していきます。【かなり痛い⇨痛い⇨痛気持ちい⇨何も感じない】坐骨神経痛でお悩みの方は、座面にソフトボールかテニスボールを置いて、患部があたるようにのります。少しずつボールが当たる位置を動かして、症状が再現される場所を探してみてください。130204_01_S_0520

坐骨神経を起こすトリガーポイント

疲労が蓄積した筋膜に形成されるシコリ=トリガーポイント。トリガーポイントが存在する場所から遠く離れた部位に、関連痛と呼ばれる痛みや痺れを放つことが特徴です。筋膜由来の痛みが自分で特定しにくいのは、このためです。下図は、坐骨神経痛に酷似した症状を起こすトリガーポイントが、形成され易い場所を示したものです。バツ印がトリガーポイントで、赤いエリアは関連痛が生じる場所です。図を参考にして責任トリガーポイントを探索してみて下さい。うまく当たれば、不快な症状が再現されるはずです。

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トリガーポイント・マニュアルより転載

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日頃の作業姿勢や動作パターンの癖を鑑みる

痛みが緩和すると治ったと思い込む人が多いのですが、痛みは単なる症状であって原因ではありません。患部にストレスを集中させている姿勢や動作パターンに気づき、それを改めていかなければイタチごっこになってしまいます。痛みのない「ご機嫌な生活」を送るためには、体に良いことを増やすより、体に悪いことを減らす方が現実的であるし、効果も持続します。日本人は「足す」よりも、「引く」ことの意味を感覚的に理解している稀有な民族です。

頑張らなくても楽に姿勢を整えてキープするコツについては、またの機会に紹介します。

まとめ

  1. 痛みや痺れ方が筋肉由来に近いのか、それとも神経由来の症状に当てはまるのか
  2. ボールかノブルのようなアイテムを使って、痛みの震源地を探索する
  3. 痛みが再現できたら圧迫(10~12秒間)とストレッチ(15〜20秒間)を繰り返す
  4. 日常の作業姿勢と動作パターンを見直す

    シンプルなので是非、お試してみて下さい。